ふるさと納税。本来の目的と、いまの姿

2008年にスタートした「ふるさと納税制度」。
その目的は、本来“自分の生まれ育った地域”や“応援したい自治体”を支援することでした。
都市部に集中する税収を地方へ循環させ、地域の活力を取り戻す。まさに「地方創生」の理念の一つでした。

しかし、制度開始から15年以上が経った今、その本来の目的と現実の姿には大きな乖離が見られます。
デイリー新潮によると、2023年度の寄附総額約1兆円のうち、約5,900億円が経費として消えたとされています。
その多くは返礼品や仲介サイトへの手数料、広告費など。
つまり、寄附の半分以上が「地域のため」ではなく、「制度のための経費」に使われているという構造です。

本来、ふるさと納税は“心のつながり”を育むための仕組みでした。
ところが今や、「お得な返礼品を選ぶ通販サイト」と化し、制度の主旨が薄れてしまっています。
また、寄附金額が多いほど税控除の恩恵が大きくなる仕組みのため、結果的に富裕層ほど得をする制度になっているとも指摘されています。
これでは「地域の格差を埋める」どころか、「恩恵の格差を広げる」危険性すらあります。

地方にとっても、問題は深刻です。
一部の自治体は高額な返礼品で寄附を集める一方で、
本当に支援が必要な小規模自治体ほど制度を十分に活用できていません。
さらに、返礼品を提供するためのコストや物流、委託経費がかさみ、地元経済に十分な還元が行われていないケースもあります。

私たちが考えなければならないのは、「ふるさと納税は、誰のための制度なのか」という根本です。
地方が主体的に地域資源を磨き、そこに共感した人が寄附で応援する。
そんな“関係人口”を育てる仕組みでなければ、持続的な地域再生にはつながりません。
私たちは各地で自治体と連携し、中には業務を委託され実施する事業も年々増えてきました。
委託費有りきでの取り組みではなく、委託費をいただく中で自走できる仕組みを作らなければ持続性はありません。
制度そのものを否定するのではなく、その理念を取り戻すことが求められています。

月曜から金曜いろいろな話題をLINEにて配信しています。

友だち追加